
ゆるく笑える動物コミュニティ
動物たちの間にもSNSが広まり始めたのは、ほんの数年前のことだ。
それ以来、森も川も動物園も、ちょっとした通知音でにぎやかになった。
特に“既読”をめぐる話題は、どんな動物にもあるあるとして浸透している。
そんな中で、最も注目されているのは猫のミケである。
ミケは器用に前足で画面をタップできるほど近代的なのに、返信という行為に関してはまったく進化しない。
いつも既読だけを残して、何も言わずにフッと姿を消してしまう。
本人いわく「ちょっと気分が乗らなかっただけ」らしいが、その“ちょっと”が何時間、いや何日続くのかは誰にも読めなかった。
ミケの行動が話題になり始めたのは、グループチャット「にゃんズ」ができてからだ。
最初はゆるっとした会話が続いていたが、ある日リーダーのトラがぼそっとつぶやいた。
「ミケ、これ読んでるよな…?」
その瞬間、メンバーの画面に“既読1”がついた。
もちろんミケだ。
しかし返信はない。
“既読スルー”の瞬間をリアルタイムで見届けた動物たちは、ざわつきつつも「まあミケだし…」と妙に納得してしまうのだった。
そんな空気の中、ウサギのラビは少し気にしていた。
「無視されると落ち込むよ…」
ミケの既読スルーは悪気がないと頭では分かっているのだが、胸のあたりがもやっとする。
その話をタヌキのポン太に打ち明けると「既読してるなら返事すればいいのに!」と的確すぎるツッコミが返ってきた。
ラビは苦笑しつつ、どこかで安心した。
「みんな、同じ気持ちなんだな…」
そう感じた瞬間だった。
ちなみにこの森には、以前**「猫の手も借りたい」**ほど忙しいと噂された仕事好きの猫もいた(参考:猫の手も借りたい!AIが考えた小説 – 忙殺オフィスキャットパニック)
働く猫もいれば、既読スルーが日常の猫もいる。
猫とひとことで言っても、なかなか幅広いのだ。
そしてある日、ついにトラが動物会議を開いた。
議題はもちろん「既読スルーについて」。
会議に招集された瞬間、またしてもトラの画面に“既読1”がついた。
出席もしていないのに既読だけはつけるミケのマイペースぶりに、動物たちはもはや笑うしかなかった。
会議ではラビが「返事がないと不安になります…」と訴え、ポン太は「ズルいでしょ!」と抗議した。
一方でカラスのクロは「気ままなのが猫の魅力だろ」とフォローを入れた。
トラは静かに頷きながらまとめた。
「ミケは悪気があるわけじゃないんだ。気まぐれなんだよ」
その瞬間また“既読1”。
返事無し。
この一連の出来事が、会議中に3回も起きたので、動物たちは最終的に悟りの境地に入った。
会議の結論はこうなった。
「ミケには返信を強制しない。気まぐれを受け入れる」
不思議なもので、その瞬間から動物たちの心はふっと軽くなった。
「返事をしなきゃいけない」という無言の圧力から解放された気がしたのだ。
その夕方、トラが「今日の集まりは自由参加でどう?」と送ると、しばらくして“既読1”。
またミケだ。
しかし今回は誰も落ち込まなかった。
ポン太が笑い出した。
「来るか来ないか、当日のお楽しみってやつだな!」
ラビも「ミケらしくて好きだな」と穏やかな表情だった。
そして集まった夜。
トラ、ポン太、ラビが待っていると、木の陰からミケがひょっこり顔を出した。
「来たのか!」
驚くトラに、ミケはしっぽをゆらしながら言った。
「気分が乗ったからね」
その言葉は、どんな長文返信よりもうれしい一言だった。
帰り道、ポン太がぽつりと言った。
「自由なのに、なぜか嫌いになれないのがミケなんだよな」
ラビも微笑んでうなずいた。
「既読スルーって、距離感の才能なのかもしれないね」
そしてミケはその夜も画面を開いた。
新しいメッセージが届いている。
もちろんすぐに既読がついた。
返事は――またそのうち、気分が乗ったときに届くのだろう。
それが、ミケらしいから。
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小説「猫の既読スルー事情と動物SNSの日常」の後日談は、noteにて公開しています。
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