
週末限定、借りぐらしの犬ライフ
春菜は犬を飼えない。
理由は単純、アパートが「ペット禁止」だからだ。
だけど平日の残業続きで、心は完全にもふ不足。
「このままじゃ、私の精神バッテリーが省電力モードに入る…」と独りごちて、スマホをいじる。
そこで見つけたのが、週末だけペットを預かれる「もふもふシェア」だった。
「UberEatsならぬ、U犬…ウーケン?」
自分で言って自分で笑った。
けれど、笑えるならまだ生きていける気がした。
春菜は登録ボタンを押し、初めての相棒に“ポメ太郎”を選んだ。
説明欄には「甘えん坊で食いしん坊。チャームポイントは鼻息」と書いてある。
鼻息がチャームって新しすぎる。
土曜の朝、待ち合わせの公園に現れたポメ太郎は、想像の1.3倍ふわふわで、想像の2.6倍えらそうだった。
ブフー!と鼻息一発、自己紹介。
「社長…ですか?」
思わず敬語になった。
散歩に出ると、通行人が振り向く振り向く。
「かわいい〜!」「写真撮ってもいいですか?」
ポメ太郎は左右の顔を交互に見せ、光の加減まで計算している。
「君…SNS知ってるでしょ」
春菜が呆れていると、近くの学生がスマホ越しに叫んだ。
「やば、電波良くなった!ホットスポット?」
「犬も歩けばWi-Fiに当たる」なんて冗談、現実になってしまったらしい。
春菜は心の中でニヤリとした。
カフェで休憩。
店員さんが犬用ビスケットをそっと差し出し、ポメ太郎はブフブフと上機嫌。
「鼻息でカプチーノの泡が再起動してる」
そんなアホな感想をメモしながら、春菜はふと、友だちが送ってくれた“働きすぎを笑い飛ばす読み物”を思い出す。
帰り道、気分転換に動物の小話を読み返すと、肩の力がふっと抜けた。
たとえば、猫が副業するという突拍子もない話に、現実のちょっとした勇気をもらえる。
そんな物語がこちら――猫の副業 うちの猫、月収10万らしい!?
お金を稼ぐ猫がいるなら、鼻息で人を集める犬がいたっていい。
動物たちは今日も、世界の重力をちょっとだけ軽くする。
三週目、春菜は別の犬にも会ってみた。
柴犬の“まめじろう”。
ポメ太郎の社長感とは対照的に、まめじろうは俳句のように静かだった。
「聞いてる?」と愚痴をこぼすと、片耳だけピコン。
その控えめな相槌が妙に効く。
春菜が思わず「会議でもこの温度でいてほしい」と呟くと、スマホの広告にカメラ講座が流れてきた。
レンズ越しの世界は、気持ちを少し整えてくれる。
そういえば、青春の眩しさと猫の愛らしさが同居した写真物語を、最近読んで胸が温かくなった。
そんな心がやさしく整う物語がこちら――猫カメラ日記にゃんとも映える青春物語
「よし、次の週末は写真も練習しよう」
春菜はそう決めた。
翌週は代々木公園でSNS撮影イベントがあるとアプリから通知。
「モデル犬募集」の文字に、春菜は反射的に参加ボタンを押した。
どうせならポメ太郎と行きたい。
予約ページを開くと、運良く“空き”の文字。
「社長、出番です」
ブフー!
鼻息で了承が届いた気がした。
イベント当日。
公園にはカメラを構えた人がずらり。
春菜は少し緊張しながらも、ポメ太郎にリードをつけ直した。
「いいかい、今日は君の鼻息で世界を明るくする日だよ」
撮影が始まると、ポメ太郎は自然に正面、斜め、足元、上目遣いと角度を変え、光を拾い、風を味方にする。
「プロ…?」
近くの少年が真剣な顔で呟いた。
「僕も写真、練習しよ」
レンズが心を映すなら、今日の心はきっと晴れている。
ところが、油断は禁物だった。
ポメ太郎が突然、別の撮影ブースへ突進。
そこには巨大な骨型のクッションが置かれている。
「待って待って待って!」
春菜は走る。
リードは他の犬と絡み、ふわふわ渦ができる。
「毛玉台風だ!」
笑いが広がる中、ポメ太郎が一声。
「ワン!」
その瞬間、近くのスマホが間違って音声アシスタントを起動。
「Hey Siri、ワン!」
Siriは真顔で応答した。
「はい、ワンですね」
会場大爆笑。
春菜も膝から崩れ落ち、芝生の匂いに笑い泣きする。
騒ぎが落ち着くと、実行委員が頭を下げた。
「すみません、骨クッションの位置が想定外で…」
「いえ、楽しかったので大丈夫です」
春菜が笑って答えると、列の向こうから「幻のスープだよ」という声が聞こえた。
撮影の後は、公園近くの人気ラーメン店に向かう人が多いらしい。
長蛇の列を眺めながら、春菜は以前読んだ“行列の奇跡”の物語を思い出す。
並ぶ時間までおいしくなる、そんな魔法の一杯の話だ。
そんな“行列の奇跡”を描いた物語がこちら――大行列で奇跡のラーメン-幻の一杯
読み返しているうちに、待ち時間さえ旅の一部に感じられた。
翌朝。
会社の朝礼で、部長の長い話が始まる。
「皆さん、働くとは――」
「わん」と言いそうになる舌を噛んで耐える。
脳内に再生されるのは昨日の芝生と笑い声。
昼休み、同僚の麻衣が弁当を持って席に来た。
「ねえ、春菜。最近なんか明るいよね。何かあった?」
「週末に、ちょっと犬を借りてる」
「犬?レンタル?それって愛は課金制?」
「違う違う。もふは、前払いじゃなくて前抱っこ」
自分でも何を言ってるのかわからないが、麻衣は吹き出した。
「今度一緒に散歩していい?」
「もちろん」
週末。
約束通り、麻衣と一緒にポメ太郎を迎えに行く。
公園でボール遊びをしていると、突然ポメ太郎が座り込み、空を見上げた。
風が木々をわたって、葉の陰影がポメ太郎の毛並みに波を描く。
春菜は思った。
「私、何のために働いて、何のために休むんだっけ」
問いは難しい。
でもポメ太郎はシンプルに答える。
ブフー。
「うん、そうね。まずは深呼吸だ」
笑った麻衣が小声で囁く。
「もし会社がまた地獄モードになったら、どうする?」
「鼻息で押し返す」
二人で大笑いしたあと、春菜は付け足す。
「それでもダメなら、夕方は温泉で音に浸かろう」
湯けむりに包まれ、音に耳を澄ます旅のエッセイを思い出すと、心がすぐに柔らかくなる。
そんな“音に癒やされる旅”を描いた物語がこちら――温泉旅行!AIが考えた小説 – 音に浸かる旅♨️
ページを閉じると、風の音も少し温かい。
帰り道、麻衣が言った。
「来週、猫カフェも行かない?伝説の看板猫がいるって」
春菜は即答する。
「行く」
あの“やらかし猫”の騒動記を思い出しただけで、もう笑ってしまう。
出かける前にもう一度読み直して、心の準備を整えよう。
そんな笑いとドタバタが詰まった猫の物語がこちら――猫カフェで大事件⁉️ 伝説の猫がやらかした
夜。
ベッドの上で春菜は今日を振り返る。
仕事の疲れは確かにある。
けれど、もふもふの体温と、鼻息のリズムと、芝生の匂いが、心の奥で柔らかいクッションになっている。
画面の中のポメ太郎は、相変わらず堂々と正面を向いている。
「ねえ、また会おうね」
そうつぶやくと、通知が一件。
麻衣からだった。
次の週末の予定が、やたら愛おしく見えた。
明日も、明後日も、たぶん忙しい。
だけど、笑いと動物と友だちがいれば、Wi-Fiより強い何かでつながっていられる。
そして眠りに落ちる直前、春菜は気づく。
「私は、“飼えない”のではなく、“借りられる”世界に住んでいる」
それは少しだけ切なくて、無限に優しい発見だった。
鼻息の音に似た、柔らかい寝息が部屋を満たしていく。
ブフー。
おやすみ、社長。


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