
指導か圧か、それが問題🤔
「また乗ってるよ……」
新入社員の春人は、出社早々うんざりした表情で肩をすくめた。
彼の右肩には、身長15cmのミニチュア先輩・神山課長がちょこんと乗っていた。
スーツにネクタイ、腕を組んで説教口調。
「春人くん、それ昨日の提出期限だったよね? 社会人ってのはね、〆切が命なんだよ」
これが「マウント合戦」の舞台、株式会社イバリカンパニー。
社員の肩に“マウント先輩”が物理的に登場し、朝から晩まで指導(という名のマウント)を続ける異常空間だった。
AI活用の末路として導入された「パーソナル上司プロジェクションシステム」は、AIによって“その人に最も刺さる説教”をするミニチュア上司を生成し、肩に常駐させるという謎システムだった。
「昨日は“ため息を数える上司”だったのに、今日は“永遠に説教してくる型”……」
春人のストレスゲージはMAX。
休憩時間に同僚の美月に愚痴ると、彼女の肩にはお茶を差し出す「気配り系マウント先輩」が。
「え、うちの課長、今朝カフェオレくれたよ☕️」
なんでそんな格差社会⁉️
春人は意を決して、自分のミニチュア先輩に言った。
「……あの、もうちょっと優しく言ってもらえませんか?」
するとミニチュア神山課長の眼鏡が光り、「その一言を待っていた」と口元を緩めた。
「部下の声を聞くのも、上司の仕事だ」
そこからは不思議と、マウントがアドバイスに変わっていった。
「指摘だけじゃなく、支えるのが俺の役目だろ?」
春人の肩は少し軽くなった気がした。
気がつくと、神山課長は「ありがとう」と小さく呟いて姿を消した。
だが隣の席から叫び声。
「うわ!今日の先輩、“体育会系根性型”だ‼️」
「1ミス10腕立てって何⁉️」
会社は今日も、肩の上で熱いマウント合戦を繰り広げている。
でも、春人はちょっとだけ笑った。
少しずつ、マウントは“支え”に変えられる。
肩の上にいるのは、未来の自分かもしれない。
そして彼は、明日も肩を貸す準備をした。
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