
あと3時間で終わるから🔥
大手コンサルに勤める入社3年目の岡田亮は、今朝も気が重かった。
理由はひとつ――「週次進捗会議」である。
午前9時、スーツ姿の社員たちが無言で会議室に入る。
机の上には山積みの資料と、色とりどりの付箋。
空気はすでに重く、まるで灼熱のような息苦しさだった。
その中心に座るのは、通称“炎の部長”。
頭に小さな角が生えているのではと噂されるほど、地獄のような会議を生み出す存在だ。
「じゃ、今日も3時間で終わるから😊」
その言葉が発せられるや否や、時計の針は凍りつき、天井からは火の粉が舞い始めた。
気がつくと、背景が真っ赤に染まり、窓の外はマグマの渦。
まるで地獄絵図の中に、会社ごと吸い込まれたかのようだった。
「……地獄か?」と亮がつぶやくと、隣の席の先輩が顔を伏せたまま言った。
「今さら気づいたのか?
この会議室は、すでに“あちら側”と繋がってるんだ」
パチパチと資料が燃え始める。
議事録には「繰り返し」「再確認」「持ち帰り」の3つの呪文が延々と綴られていた。
逃げようとしても、会議室のドアは開かない。
「ここで大切なのは、質問しないこと、提案しないこと、期待しないこと」
そう告げる先輩の目は虚ろだった。
亮は意を決して口を開く。
「部長、この会議、本当に意味ありますか?」
一瞬、部長の笑みが止まった。
「それ、議事録に残しておくよ」
その瞬間、会議テーブルがぐわっと割れ、中央から炎が噴き出した。
あたりは真っ赤な光に包まれ、誰もが一斉に資料で顔を隠す。
「ようこそ、“会議地獄”へ」
そうささやいたのは、部長の後ろに立っていた“もう一人の部長”。
彼の頭には本当に角があった――。
そしてその日、誰も退室することはなかった。
会議は永遠に続く。
あと3時間で終わるという言葉を信じながら――。 その後、亮の姿を見た者はいない。
彼の名札だけが、焦げたテーブルの上に残されていた。
それは、忠誠心か、諦めか、それとも反抗の印だったのか――誰にもわからなかった。
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