今日の上司は当たりか？
「それじゃ、今日もいっちょ回してみるか」
月曜朝9時、スタートアップ企業「ガチャル株式会社」の会議室には、社員たちが列をなしていた。
目的はただ一つ——「上司ガチャ」。
社長が突如導入したこの制度は、毎朝ランダムでその日の上司が決まるという奇抜な仕組みだった。
白と赤のガチャマシンの中には、様々な顔のフィギュアが詰まっている。
「鬼軍曹型」「気まぐれ芸術家型」「放任型」「ハラスメント寸前型」……そしてごく稀に「神対応型」が混ざっているという。
新入社員のコウタは、希望と不安を抱えながらハンドルを回した。
コロコロ……カプセルが一つ転がる。
中には、爽やかな笑顔のミニチュア上司。
「おっ、神対応型だ‼️」
思わずガッツポーズするコウタ。
その日、彼の一日は夢のようだった。
「意見があるなら、遠慮せず言っていいよ☺️」
「コウタくんの資料、すごく丁寧だね✨」
「定時で帰っていいから、無理しないようにね」
まるで理想の社会人ドラマのような展開。
ランチは上司のおごり、午後はチームでクイズ大会。
「なんて幸せなんだ……」
コウタは思った。
——しかし、その幸福は翌日、儚く崩れる。
「ぐわはははは‼️ 俺様が今日の上司だァァ‼️」
現れたのは、赤ら顔で声が大きく、机をドンドン叩く「超ドS指導型上司」。
「資料が遅い‼️ 言われる前に動け‼️ てか、なんで笑ってない⁉️」
コウタの顔から血の気が引く。
怒声、詰問、無茶ぶり、残業確定……。
「昨日の俺は、夢でも見てたのか……」
帰りのエレベーターで、彼はふと笑った。
手のひらには、明日のガチャ用コインが握られている。
だが彼は知っている。
明日また、あのマシンを回せば、希望が出るかもしれない。
「俺たちが回してるのは、ガチャじゃなくて未来なんだ」
そう呟いて、彼はまた列に並ぶ。
人生は、今日も運次第🎯
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