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ワンオペ犬カフェ!犬が回す!?笑える日常物語

犬も働くカフェ騒動記

田舎町の駅前に、ひっそりと小さなカフェがあった。
名前は「WAN ROOM」。
看板には大きな犬の足跡マークが描かれている。
店主は30代半ばの女性・美咲。
彼女はカフェを一人で切り盛りしていた。

ただし、厳密には「一人」ではなかった。
彼女には相棒がいる。
ゴールデンレトリバーの「マフィン」だ。

「マフィン、いらっしゃいませの準備できた?」

そう声をかけると、マフィンは「ワン!」と吠えて、尻尾を振りながら入口に向かう。
常連客は知っていた。
ここでは犬が店員のように働くのだ、と。

マフィンの役割は多い。
玄関マットの上でお客を迎え、時には新聞をくわえてきて渡す。
常連の子どもにはハイタッチ。
お客が帰るときは入口までお見送り。
店の雰囲気はすっかり「マフィンが店長」で、「美咲は補佐」のようになっていた。

ある日、カフェに東京から来たカップルが入ってきた。
女性が驚いた声をあげる。

「ちょっと!見て!犬が店員してる!」

マフィンはいつものように、テーブルの横にちょこんと座り、メニューを口にくわえて差し出す。男性は思わずスマホを構えて動画を撮った。

「うわ、バズるやつだこれ!」

その動画は案の定、SNSで拡散される。
「犬がワンオペで働くカフェ」として一気に話題となり、翌週には行列ができるほどの人気店に。

だが、ブームが来るとトラブルもやってくる。
お客が急増し、美咲一人では回らない。
注文が重なり、キッチンはてんやわんや。
マフィンも頑張るが、犬にできることは限られている。

「マフィン、助けてー!」

美咲が叫ぶと、マフィンは妙な工夫をし始めた。
空になったコーヒーカップを運び、椅子に座っている子どもをあやし、時には「ワン!」と吠えて店内の混雑を整える。
犬にしかできないサービスが、逆に大人気になっていった。

ある夜、美咲は閉店後の店でマフィンに話しかけた。

「ねぇ、マフィン。お客さんが増えるのは嬉しいけど、私たちだけじゃ限界かも」

マフィンはじっと彼女を見つめ、そっと前足を差し出した。
まるで「一緒にがんばろう」と言っているように。

数日後、常連客の大学生が手伝いを申し出る。
「バイトさせてください!犬と一緒に働きたいんです!」と。
その言葉をきっかけに、地域の人たちが少しずつ店をサポートするようになる。

「WAN ROOM」はやがて町の名物となり、テレビにも紹介される。
だが美咲にとって一番大切なのは、マフィンと過ごす日々の中で見つけた「働く喜び」だった。

ある日、店に来た小さな女の子が言った。

「このお店、犬が店員さんだから楽しいんだね!」

美咲は微笑み、マフィンの頭をなでる。

「そうだね。マフィンがいるから、このカフェは笑顔でいっぱいになるんだよ」

マフィンは満足そうに「ワン!」と吠えた。
まるで「これからもワンオペ任せろ!」と言っているように。

その後も「WAN ROOM」は進化を続けた。
マフィンの人気は衰えず、グッズ化まで進む。
「マフィン店長マグカップ」「肉球スタンプ付きクッキー」などが飛ぶように売れ、売上は右肩上がり。

しかし、美咲は迷っていた。
商業的な拡大が進むほど、マフィンの負担も増えるのではと心配だったからだ。
犬は言葉を話さないけれど、表情やしぐさで疲れを隠せない。
ある日、閉店後にマフィンがぐったりと寝そべる姿を見て、美咲は胸を締めつけられる思いだった。

「マフィン、ごめんね。無理させちゃったかな」

マフィンは目を細めて尻尾をひと振りした。
まるで「大丈夫」と言っているようだが、それがかえって切なかった。

そんなある日、町の子どもたちが「犬の休日イベント」を企画した。
地域の人々が集まり、マフィンにとっての「休日」をプレゼントするというのだ。
広場で子どもたちが描いた絵を飾り、犬用プールを用意し、おやつも山盛り。
マフィンは久しぶりに走り回り、水しぶきをあげ、笑顔を見せた。

「マフィンの笑顔が一番のご褒美だね」

美咲は涙をこらえながらつぶやいた。
店の人気も大事だが、何より大切なのはマフィンの幸せ。
そう強く感じた瞬間だった。

それ以来、美咲はカフェの営業を少し調整した。
休業日を増やし、マフィンと一緒に散歩したり、自然の中で過ごす時間を確保した。
常連客も「それでいいよ!」と賛同し、店は無理のない形で続いていった。

やがて「WAN ROOM」は単なる犬カフェではなく、「犬と人が共に笑顔で働き、休む場所」として愛されるようになる。
美咲とマフィンの姿は町の人にとっても励みとなり、訪れる人は皆、自然と笑顔になった。

ある日、カフェの黒板に美咲がこう書いた。

「今日もワンオペですが、無理せず笑顔で営業中!」

マフィンはその横で「ワン!」と吠えた。
看板犬であり、看板店長であり、町のアイドル。
犬と人が作る小さな奇跡の物語は、まだまだ続いていく。

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