最終打席の衝撃⚾
県立どん底高校野球部は、創部以来一度も勝ったことがない万年予選敗退校だった。
そんなチームに突如現れた転校生――その名も“魚住 雷斗（うおずみ らいと）”。
背負っていたのは、異様な形をしたバットだった。
「おい、それ……バットじゃなくて魚雷じゃねえか⁉️」
「フッ、俺にとっては武器だ」
その日から、彼の特訓が始まった。
筋トレ？しない。素振り？しない。
彼がやるのはただ一つ、魚雷バットを肩に担いでの“フルスイング歩行”。
チームメイトは半信半疑だった。
だが迎えた初戦、彼の打球は異次元だった。
1回裏、ノーアウト満塁。魚住が打席に立つ。
ブンッ！！！
轟音とともに白球は空を切り裂き、場外へ――。
「魚雷だ……いや、バットだった……！」
観客のどよめき。監督の涙。主審すらボールを見失う。
試合は10対0のコールド勝ち。
「おい、魚住！その魚雷、どこで手に入れたんだよ！」
「じいちゃんの形見さ。元・潜水艦乗りだった」
その後の試合でも、魚住の打球は毎試合のように場外弾を連発。
“魚雷バット”の異名がSNSで拡散され、どん底高校は一気に全国の話題となった。
試合会場にはテレビ局や実況解説まで押し寄せ、彼のスイングは笑いと歓声をさらっていった。
そして決勝。相手は王者・轟高校。
強豪エースが放った160km/hの豪速球に、魚住がバットを振り抜いた――。
ホームランかと思いきや、打球はピッチャーの帽子をかすめ、グラウンド中央に“突き刺さる”。
一瞬の静寂。
そして審判が叫ぶ。
「……安打、です」
観客大爆笑。轟高校も笑って握手。
その瞬間、スポーツニュースのテロップが踊った。
“魚雷バット、轟高校を撃ち抜く！”
その年、どん底高校は決勝で惜しくも敗れ、甲子園出場は逃した。
だが魚住の魚雷バット伝説は、誰よりも強く人々の心に刻まれた。
魚住は語った。
「勝つために戦ったんじゃない。笑わせたかったんだ」
魚雷バットは今も、校舎の屋上に展示され、夕日に照らされている――。
その姿は、誰かの夢の続きを待っているようだった。
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