
金色の列にため息🌟
「またかよ……!」
ゴールデンウィーク、翔太はど真ん中の渋滞に巻き込まれていた。
目の前にずらりと並ぶのは、まさかの金色の車たち。
前も後ろも、右も左も、すべてが金ピカでぎっしりだ。
まるで巨大な宝石箱に閉じ込められたような気分だった。
「動ける気がしない……」
額に手を当て、ため息をついたそのとき、不思議なものが目に映った。
自分のボンネットの上に、キラキラと輝くカレンダーがふわふわと浮かんでいる。
よく見ると、カレンダーには小さな白い羽根が生えていた。
「え、なにこれ……」
カレンダーには大きく「3〜6」と書かれている。
そう、ゴールデンウィークの期間だ。
ふわりふわりと風に乗り、カレンダーは渋滞の列を越えて、ゆっくり前方へと進んでいく。
まるで、休暇そのものが逃げ出していくようだった。
翔太は思わず車を降り、カレンダーを追いかけた。
金色の車と車の間をすり抜けながら、必死に手を伸ばす。
しかし、あと少しのところで、カレンダーはふわっと上昇し、手の届かない高さへ。
「……ああ、無理か」
軽く息を吐きながら、翔太は諦めて車に戻った。
車内に座り直し、シートベルトを締める。
ふと隣を見ると、隣のドライバーも、金色の車に囲まれて呆然としていた。
「みんな同じか……」
再びハンドルを握り、ぼんやりと空を見上げた。
さっきまでそこにいたカレンダーは、もう見えない。
そのとき、ポン、と携帯に通知が入った。
【渋滞解消:先頭で事故処理完了】
「え、マジで⁉️」
驚いて前方を見ると、金色の車たちが少しずつ動き出している。
まるで、空に飛び立ったカレンダーが「さあ、進め」と背中を押してくれたかのようだ。
「……ありがとうな」
思わず、翔太は口にした。
窓を全開にして、柔らかな春風を車内に取り込む。
金色に輝く渋滞を抜け、自由な休暇がようやく始まる。
エンジンの音、風の音、そして、どこか遠くで聞こえる祭り囃子。
すべてがゴールデンウィークの始まりを祝っているようだった。
翔太はアクセルを踏み込み、青空へ向かって走り出した。
キラキラとした光景が、どこまでも続いている気がした。
「よし、最高の連休にしてやるか!」
彼の胸には、逃げていったカレンダーに負けないくらい、わくわくする期待が広がっていた。
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