
バズをやめた犬の幸せ探し
朝、飼い主の声がキッチンから響く。
「ポメ吉〜!そろそろ撮影の時間だよ!」
今日も我が家の人気犬・ポメ吉の“撮影タイム”が始まる。
フォロワー10万人を誇るイヌフルエンサーとして、彼の朝は早い。
ブラッシング、ライト調整、背景の花の位置──準備に余念がない。
「#今日もモフモフ日和」「#犬好きさんと繋がりたい」。
飼い主は投稿文を吟味しながら、スマホ片手に汗だくだ。
ポメ吉はというと、カメラ目線で尻尾を振りながらも、どこか疲れた様子。
「ボク、もうちょっと寝てたいワン……」
最近、SNSの“いいね”数が落ちてきた。
ライバル犬の「シバ美ちゃん」が新作コスプレで話題をさらっているらしい。
飼い主は焦り、ポメ吉にサングラスをかけ、スムージーをくわえさせた。
「これなら映えるでしょ!」
「スムージーなんて飲めないワン……」
そんな中、偶然アップした“あくび写真”がバズった。
「寝顔かわいすぎ!」「月曜の私みたいで笑った!」
一夜にしてフォロワーが爆増。飼い主は大喜びだ。
だが、ポメ吉の気分は複雑だった。
「ボクの本業、寝顔モデルだったのかワン?」
翌日も“変顔シリーズ”を量産され、ついに限界が訪れた。
ポメ吉は撮影拒否を決意する。
カメラを向けられても寝たふり。おやつを見せられても無視。
「お願い、ちょっとだけでいいから!」と必死の飼い主。
そのとき、公園で出会った老犬のシロが言った。
「お前さん、人気者らしいな。でも、幸せかい?」
ポメ吉はハッとした。
“バズる”ために走ってきたけれど、本当の笑顔を忘れていたのかもしれない。
次の朝、ポメ吉はリードをくわえて玄関に立った。
「今日は撮影なしで散歩がしたいワン!」
飼い主は少し驚いた顔をしたが、やがて微笑んでリードを握った。
久しぶりの“普通の散歩”だった。
風のにおい、草の手ざわり、すれ違う人の笑顔。
ポメ吉は走り回り、飼い主はその姿を見て笑った。
「こういう時間、忘れてたなあ……」
帰宅後、飼い主は写真を一枚だけ投稿した。
『#今日はSNSお休みの日』
そこには、草の上で満足げに寝そべるポメ吉の姿。
“いいね”の数は少なかったが、コメント欄は温かかった。
「見てるだけで癒されました」
「こういう日も大事ですよね」
その日以来、ポメ吉は“ゆる投稿犬”として再出発した。
寝転ぶ日も、散歩をサボる日もそのまま投稿。
無理に笑わず、自然体で過ごす日々が心地よい。
フォロワーは少し減ったけれど、リアルの友達が増えた。
公園ではシロや他の犬たちと談笑し、時には飼い主も輪に加わる。
最近では、散歩中に出会った犬仲間が「犬も歩けば棒に当たる!AIが考えた小説 – ワンコ、棒に当たって大冒険!」みたいなハプニングを話してくれることもある。
そんな日常の方が、どんな“バズ投稿”よりも心に残る。
ポメ吉は今でも人気者だ。
けれど、もう“フォロワー数”より大切なものを知っている。
「フォロワーより、しっぽの振り方の方が大事だワン。」
そう言って風を感じながら歩くポメ吉の後ろ姿は、
まるで**ペット社会化時代、犬が上司になった日🐾**の主人公みたいに、少し誇らしげだった。
そして今日も、スマホのシャッター音がなくても、笑顔はちゃんと咲いている。
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