嫉妬とハリセン🎤
アイドルグループ「シャンパン☆スターズ」は、いま最も勢いのある新人グループだった。
その中でも圧倒的な人気を誇るのが、センターのユリ。
笑顔も歌もダンスも完璧、SNSのフォロワーもひとりだけ桁違いだった。
ただ、それが全員に歓迎されるとは限らなかった。
ある日のステージ。
ユリがソロパートを歌い始めた瞬間、メンバーのひとり、アヤカが巨大な黄色いハリセンを持って立ち上がった。
観客はざわつく。
「なにこれ、演出？ドッキリ？」
その刹那、アヤカのハリセンが空を切り、ユリの背中へ――。
バシッ！！
乾いた音と同時に、ステージが一瞬静寂に包まれた。
ユリは驚いた表情で振り返った。
だが、アヤカはにやりと笑って言った。
「センターばっか目立ってさ。たまには“打たれる杭”の気持ちも知りなよ」
事務所は大混乱。
「パフォーマンスの一部です」と釈明したものの、観客が撮影した動画はすでに拡散。
《#出る杭は打たれる》《#ハリセン事件》《#センターの苦悩》が一気にトレンド入り。
翌日、ユリはこうコメントした。
「私は“出る杭”として、何度でも打たれてみせます。それでも、前に出ることをやめません」
ネット上には賛否両論が渦巻いた。
「ユリがんばれ！」「アヤカの気持ちもわかる」「もうこのグループ解散か？」
だが意外にも、その“事件”でグループの知名度は爆上がり。
ユリは“打たれても輝くアイドル”として、さらなる伝説を築いていくことになる。
結局、“出る杭は打たれる”の本質は、目立つ者への風当たりではなく、
それでも立ち続ける者への“覚悟”の話なのかもしれない。
あのハリセン事件から3年。
ユリは今やソロでドームツアーを成功させ、あのときのハリセンを額縁に入れて楽屋に飾っているという。
その下にはこう書かれていた。
「打たれるなら、全力で出てやる」
その横には小さく…
「なお、アヤカは現在マネージャーです」
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