
24時間営業は地獄⁉️
「俺たちって……何時間働いてるんだっけ?」
深夜2時、オフィスの明かりは当然のように煌々と灯っていた。
書類に埋もれた席で、ユウトがコーヒーを啜る。
苦い。とにかく苦い。
いや、もはや味すら感じないレベルだった。
壁には堂々と掲げられたスローガン——
「就業24時間OK!」
ブラックすぎて笑えてくる。
「うち、ブラック企業って言われてるの知ってる?」
新人のアヤがぽつりと呟いた。
それを聞いた瞬間、全員の動きが止まった。
「やめてくれ……。その言葉、もう効くんだ……」
先輩のハルキが震えながらコーヒーを口に運ぶ。
「てかさ、このコーヒー、ブラックしかないのがもう皮肉じゃね?」
ユウトが笑うと、みんな少しだけ笑った。
それでも顔は死んでいる。
「じゃあ来月から新ブランド立ち上げるってマジですか?」
アヤが上司に問うと、後ろからそっとコーヒーポットが現れた。
「うん、“ブラックインブラック”ってブランド名にしようと思って」
無表情な部長が言う。
コーヒーではなく、心が沸騰した。
「じゃあ次は“ブラック・ザ・ワールド”ですか?」
「いや、“ブラック・ザ・フューチャー”だな」
誰かが椅子から転げ落ちた。
笑いではない、絶望だった。
その瞬間、全員が思った。
——このままじゃ、俺たち、本当に“粉”になる。
だがそのとき、アヤがふと立ち上がった。
そして会議室のホワイトボードにこう書いたのだ。
『有給、ください。』
誰もが凍りつく中、その言葉は雷のように響いた。
一瞬の静寂のあと、静かな拍手が起きた。
それは小さな反乱の始まりだった。
誰も声を上げなかったこの職場で、
たった一言が、空気を変えた。
——そして数日後。
社内にブラックコーヒー以外の「カフェラテ」が導入された。
部長は言った。
「我が社は、ダークローストからミルク入りに移行します」
小さな革命は、ほろ苦くも甘い味がした☕✨
その朝、ユウトは思った。
「……カフェラテって、泣けるほどうまいんだな」
アヤの机には、誰かが書いたメモが置かれていた。
『次は定時退社を目指そう』
戦いはまだ、始まったばかりである。
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