
今年もその季節がやってきたと気づいたのは、ローソンの青い看板を見た瞬間だった。
恵方巻きの予約という言葉は、なぜか毎年人を少しだけ正直にする。
そして私は、その正直さに盛大に振り回されることになる。
会社帰りに立ち寄ったローソンで、私は完全に油断していた。
レジ横に置かれた恵方巻き予約のポスターは、主張が強いわけでもないのに、なぜかこちらの予定をすべて見透かしている顔をしていた。
今年もどうせ当日でいいかと思っていた私の心を、静かに、しかし確実に揺さぶってきた。
恵方巻きは節分に食べるものだと、誰もが知っている。
だが問題はそこではない。
予約するかしないか、その選択がなぜか一年の生き方まで問いかけてくるところにある。
私はレジ前で立ち尽くし、スマホを取り出してカレンダーを確認した。
節分当日は平日で、仕事はきっと長引く。
そうなると、帰りに売り切れた恵方巻きの棚を眺めながら帰宅する未来が、ありありと想像できてしまった。
その瞬間、店内放送が流れた。
まるで私の迷いを見計らったかのように、恵方巻き予約受付中という言葉が、やけに優しい声で響いた。
私は完全に包囲された気分になった。
この既視感はどこかで味わったことがある。
そうだ、以前ファミマ恵方巻き予約に振り回された私を読んだときにも、同じような気持ちになったのを思い出した。
コンビニは違えど、人間の迷いは毎年ほとんど進化していない。
しかし、ここで予約すると何かに負けた気がする。
毎年同じ葛藤をし、毎年同じように悩んでいる自分を、そろそろ卒業したい気持ちもあった。
恵方巻き一つで大げさだと思われるかもしれないが、本人にとっては立派な年中行事なのだ。
後ろに並んでいた男性が、スマホを見ながら小さくため息をついた。
どうやら同じく恵方巻き予約で悩んでいるらしい。
見知らぬ他人なのに、急に同志のような気持ちになった。
私は勇気を出して、予約お願いしますと口にした。
すると店員さんは、慣れた手つきで端末を操作しながら、ありがとうございますと微笑んだ。
その一言が、なぜか少しだけ誇らしく聞こえた。
予約を終えて店を出ると、外の空気がやけに澄んで感じられた。
恵方巻きを予約しただけなのに、今年はちゃんと生きている気がした。
大げさだが、それでいいと思えた。
数日後、職場で恵方巻きの話題になった。
当日派と予約派に分かれ、なぜか軽い論争が起きた。
私は予約派として静かに手を挙げたが、心の中では少しだけ優越感があった。
節分当日。
仕事は予想通り長引いたが、私は焦らなかった。
ローソンに寄り、予約済みの恵方巻きを受け取る未来が確定しているという事実が、心を穏やかにしてくれた。
家に帰り、無言で恵方巻きを食べながら、来年もきっと同じように悩むのだろうと思った。
だがそれも悪くない。
ローソンと恵方巻きと予約は、私にとって季節を確認するための大切な合言葉なのだから。
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