
犬がつないだ不思議な出会い
「うちのコ、最近あんまり散歩できてなくて……」
そう言ったのは、仕事帰りに偶然立ち寄った公園で出会った女性だった。
新米デザイナーの拓真は、最近どうもストレスが溜まっていた。
在宅勤務と締め切りに追われる毎日。
会社のSlackには通知が絶えず鳴り響き、スマホの画面を見ているだけで胃がキリキリする。
そんなある日、地域アプリ「マチペッツ」で目にしたのが「犬の散歩代行シェア募集」という投稿だった。
近所の飼い主とマッチングして、週に何度か散歩を手伝うというサービス。
「犬の笑顔に癒されたい」という、軽い気持ちで申し込んだのが始まりだった。
マッチング相手の名前は「りんご」。
どんな人かと思えば、初対面の日に現れたのは、スーツ姿のまま犬を抱えた女性だった。
「初めまして!この子、“ポチタ”です!」
「ポチタ?」
「はい、“ポチタ”です。“ポチ”と“チェンソーのポチタ”をかけてみたんです。わんだふるでしょ?」
いきなりの駄洒落に、拓真は思わず笑ってしまった。
犬の名前にサブカルとダジャレを混ぜるセンス。
なんだか、この人となら気楽に話せそうだと思った。
それからというもの、週2回の「犬散歩シェア」が始まった。
夕暮れの河川敷を、ポチタを真ん中に歩く二人。
最初は犬の話ばかりだったのに、次第に仕事の愚痴、好きな音楽、最近のコンビニスイーツまで話題が広がっていった。
ある日、りんごがふと呟いた。
「うちの会社、ちょっとドッグ入りしててさ」
「ドッグ入り?」
「“どっぐり”って、“ドッグ=犬”と“ドツボにはまる”をかけてるの。つまり、めっちゃ忙しいのよ」
「そのダジャレ、犬の散歩より滑ってるよ」
「ひどい!笑」
ポチタが尻尾を振りながら、二人の足元をぐるぐる回る。
まるで、「まあまあ、仲良くやれよ」と言っているようだった。
最近では動物たちの癒しパワーを描いた話題作も多い。
たとえば、猫カメラ日記にゃんとも映える青春物語 や うとうとリス 昼下がりの癒し事件簿 のように、動物と人間の絆がじんわり心に染みる。
拓真もそんな世界に少しずつ惹かれていった。
ある日、りんごが仕事で徹夜続きになり、散歩のシェアを一時休止することになった。
「ごめんね、ちょっと今バタバタで」
メッセージの最後に、ポチタの寝顔スタンプが添えられていた。
しばらく一人での散歩に戻った拓真は、ふと気づく。
ポチタのいない散歩道は、どこか味気ない。
りんごのダジャレが聞こえない夕暮れは、ちょっとだけ寂しい。
そんな折、りんごから再び連絡が来た。
「仕事がひと段落したから、今週末からまた散歩できるよ🐶」
「了解!ポチタも久々に全力ダッシュかな?」
「うん!最近は運動不足で、ワンサイズ大きくなったかも(笑)」
週末、公園に現れたポチタは確かに少し丸くなっていた。
その姿を見て、二人は同時に吹き出した。
「ほんとに“ポッチャタ”になってる!」
「ダジャレまで太ったのか!」
笑いながら三人(正確には二人と一匹)は歩き出す。
夕日が差し込み、ポチタの毛が金色に輝く。
りんごが少し真面目な声で言った。
「拓真くんさ、散歩一緒にしてると、不思議と元気出るんだよね」
「俺も。ポチタとりんごに、救われてるかも」
「それって、もしかして“犬援交”?」
「いや、それ犯罪的に聞こえるからやめて(笑)」
彼女のボケが完全に決まって、二人はしばらく笑い続けた。
ポチタは首をかしげながら、尻尾を振っている。
そんな二人の会話は、どこか 豚に真珠!AIが考えた小説 – 出世するブタ!? のような、ユーモラスな社会風刺にも似ていた。
笑いの中にちょっとした本音が混ざる瞬間。
それが、拓真にとっての“癒し時間”になっていた。
数ヶ月後、「犬散歩シェア」アプリが大型アップデートを迎えた。
新機能は「ペア登録モード」。
つまり、二人一組で同じ犬の散歩をシェアできる制度。
アプリの通知に、「あなたのペア候補:りんご」と表示された瞬間、拓真の心がちょっと跳ねた。
「りんごさん、これ…一緒に登録しようか?」
「えっ?カップル機能じゃないの?」
「いや、シェア機能だよ」
「ふふっ、でも“シェア”って、“しあわせを分け合う”って書くみたいじゃない?」
拓真は照れ隠しのようにポチタのリードを握り直した。
ポチタがまるで祝福するかのように、また尻尾をぶんぶん振った。
その日から二人は、“恋人未満ペア登録”という微妙な距離感のまま、週末の散歩を続けている。
近所の人からは「いつも仲良しね」と言われ、二人は顔を見合わせて笑う。
「ねえ、拓真くん」
「うん?」
「私たちって、もうシェア以上、恋未満って感じだよね」
「じゃあ、“ワンだふる関係”ってことで」
りんごは笑いながら、そっとポチタの背中をなでた。
「ほんと、この子がキューピッドだね」
ポチタは「ワン!」と一声吠え、リードを軽く引っ張った。
まるで、「早く次のステップに進めよ」と言っているかのように。
夕暮れの河川敷。
三つの影が、ゆっくりと重なって伸びていった。
そんな穏やかな時間は、ネコノマド が行く爆笑カフェ珍道中 のように、笑いの中にほっとする瞬間をくれる。
そして、ストレス社会を笑い飛ばす力は、まるで 残業アラーム★演歌が響くオフィス大脱走劇 の主人公たちのように、少し勇気をくれるのだ。


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