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にゃるそっく2.0:猫が見ていた防犯ハート事件簿

笑って泣ける猫カメラ日常録

町の片隅にある古びた商店街。
そこに住む猫・ミルクは、いつのまにか地域の「非公式防犯担当」になっていた。
首輪には最新式の小型カメラ——名付けて「にゃるそっく2.0」。
人間たちは「猫の映像で事件を防ぐなんて面白い!」と盛り上がっていたが、ミルク本人(本猫?)はそんなことどうでもよかった。
ただ、美味しいかつお節がもらえればそれでよし。

「ミルク、今日もよろしくね」
笑顔で声をかけるのは、商店街の雑貨屋の娘・花。
彼女は大学を出て戻ってきたばかりで、店を手伝いながら地域の防犯活動にも参加していた。
ミルクのカメラの映像はWi-Fi経由で花のスマホに転送され、近所の防犯アプリ「みまもりんく」に自動で投稿される仕組みだ。
その映像が、なぜかいつも「ほんわか」していてバズっているのだ。

ある日、花はいつも通り映像をチェックしていた。
「……ん?」
画面には、夜の商店街の裏道。
ミルクの首元のカメラが揺れる。
そこに映ったのは、しゃがみ込んでいる青年の姿。
彼はコンビニの袋を持ちながら、何かを地面に置いていた。
「……何してるの、この人?」
翌朝、現場を見に行くと、小さな花束が置かれていた。
近くの街灯の下には「ありがとう」という手書きのメモ。

——それは、1年前に閉店したパン屋の前だった。
花は思い出す。
そのパン屋で働いていた青年・悠太。
彼はいつも優しくて、でも突然いなくなった。
噂では、家族の事情で遠くに引っ越したらしい。
「まさか……あの人?」
映像を拡大しても顔までは映らない。
だが、その仕草。
パンをこねるときに左手を少し曲げていた癖。
確かに悠太だった。

ミルクは何も知らずに、のんびり毛づくろいをしていた。
だが、その夜もまたミルクのカメラは何かを捉えた。
画面に映るのは、悠太がパン屋の前で何かを話している姿。
しかし彼の前には誰もいない。
「まるで誰かに話してるみたい……」
花はその映像を何度も再生した。

次の日、花は勇気を出して現場へ向かった。
ミルクがその後ろをトコトコとついてくる。
「悠太くん……?」
声をかけると、驚いた青年が振り返った。
「あ、花ちゃん……」
彼は照れくさそうに笑った。
「ちょっと、ここにパン屋があったころのお礼を言いに来たんだ」
花は胸が少し痛くなった。
「この店を始めるきっかけ、あのパン屋だったんだよ」
悠太はカバンから小さな紙袋を取り出した。
中には手作りのクロワッサン。
「久しぶりに焼いてみたんだ。ミルクにもどうぞ」

猫のミルクはちゃっかり袋に顔を突っ込み、バターの香りを嗅いでいた。
その瞬間、彼の首輪カメラが作動し、二人の姿を撮影した。
「にゃるそっく2.0」が捉えたのは、事件ではなく、心のすれ違いが解ける瞬間だった。

翌日、商店街の掲示板には新しい動画が投稿されていた。
タイトルは「#猫が見ていた」。
映っていたのは、笑う二人と、クロワッサンをかじる猫。
コメント欄には「最高の防犯カメラだ」「心が守られた」「にゃるそっくほしい!」といった声が並んだ。

花は言った。
「ねぇ、ミルク。あんた、今日も仕事したね」
「にゃー」
ミルクは短く鳴いて、再び尻尾を揺らした。
防犯なんて言葉を知らなくても、猫は人の心を見守る天才だ。

その後、悠太は商店街に戻って新しいパン屋を始めた。
名前は「NyaruBoulangerie(にゃるブランジェリー)」。
開店初日、行列の先頭に立っていたのはもちろん花。
そして、店の入り口には一匹の猫の姿があった。
首輪のカメラが再び光る。
ミルクは今日も、世界の平和と、焼きたてパンの香りを見守っていた。

——にゃるそっく2.0、本日も異常なし。

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