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リスのどんぐり投資で笑撃市場バブル

ドングリは未来の株券!?

「ドングリは未来の株券!?」

そうつぶやいたのは、商店街の片隅にある古びたカフェでコーヒーを飲んでいた青年・健太だった。
彼は株や仮想通貨にハマっていたが、最近は大損を繰り返して財布がすっからかん。
そんなとき、カフェの庭先で一匹のリスが、せっせとどんぐりを土に埋めているのを見て思いついたのだ。

「リスって毎年こんなにコツコツ投資してるのか…。俺よりよっぽど堅実じゃないか」

カフェの店主であり、動物好きのおばあさん・春江が笑った。

「そうねぇ。あのリスたちは忘れっぽいから、自分で埋めたどんぐりの場所も忘れるのよ。でもね、それが結果的に森を育ててるの。ドングリ投資、って言ってもいいわねぇ」

健太の脳裏に電流が走った。

「ドングリ投資…!これだ!!」

彼はその日のうちにSNSに「#どんぐり投資はじめました」と投稿した。
最初は冗談半分だったが、フォロワーからの反応が思いのほか大きかった。

「リスに負けるな!」
「どんぐり相場、爆上げ確定!?」
「ビットコインよりリスコインだろ」

次第にハッシュタグは拡散し、なぜか真面目に“どんぐり経済”を語る人まで現れた。

数日後、カフェの前には奇妙な光景が広がっていた。
スーツ姿のサラリーマンがどんぐりを数えている。
学生たちがどんぐりを袋詰めして「1グリ=10円」などと勝手にレートを決めて売買している。

「いやいや、これただの木の実だろ…」

健太は思わずツッコミを入れたが、すでに「どんぐり取引所」というアプリまで作られていた。
ログイン画面にはリスのイラストが描かれ、どんぐりのレートがリアルタイムで上下する。

「リスの経済圏、誕生!」
ニュース系YouTuberが大げさに取り上げたことで、事態はさらに加速。
地方の観光地では「どんぐり銀行」がオープンし、貯めたどんぐりを“預金”できるようになった。

そんな中、健太はリスの中でも特に働き者の「チョロ」と出会う。
チョロは他のリスより記憶力が良く、埋めたどんぐりをほとんど忘れない天才リスだった。

「ピピッ!」

チョロが口にくわえたどんぐりを見せびらかすように健太に差し出す。
なぜかその仕草が「俺の投資、見とけよ」と言っているようで、健太は笑った。

「お前、すげえな。よし、俺と組もう!」

健太とチョロの“どんぐり共同事業”が始まった。
チョロは毎日コツコツとどんぐりを集め、健太はそれを「プレミアどんぐり」として市場に出す。
「チョロ印のどんぐりは発芽率が高い!」と評判になり、価格は高騰。

やがて、どんぐり市場は狂乱の様相を見せた。
「どんぐり長者」が現れ、テレビのワイドショーで紹介される。
女子高生が「どんぐりポーチ」をファッションとして持ち歩き、サラリーマンが投資先を聞かれると「リス株です」と答えるのが流行。

果ては政治家まで「どんぐり経済を未来の柱に」と演説する始末。

だが、バブルは長く続かなかった。

ある冬の日。
市場に出回るどんぐりの数が急激に減ったのだ。
原因は、チョロを含むリスたちが「冬眠モード」に入ってしまったことだった。

「チョロォォ!起きてくれよ!お前が寝ちゃったら市場が崩壊するんだ!」

健太は必死にチョロを呼んだが、チョロは丸くなってすやすや眠っている。
SNSでは「どんぐりショック」と呼ばれ、レートは大暴落。
サラリーマンはポケットに詰めたどんぐりを泣きながら捨て、女子高生はどんぐりポーチをメルカリで売り払った。

「やっぱり木の実は木の実か…」
健太は頭を抱えた。

しかし春江おばあさんは笑った。

「いいじゃないの。リスたちはいつも自然に任せて生きてる。冬は寝て、春になればまた働く。バブルだとか暴落だとかは、人間が勝手に大騒ぎしてただけよ」

やがて春になり、チョロが目を覚ますと、彼の隠したどんぐりが芽を出し、小さな森になっていた。
子どもたちが森で遊び、鳥が歌い、人々が集まる憩いの場所となった。

「お金より大事な投資ってあるんだな」

健太はつぶやいた。
リスのどんぐり投資は、人間にとって“未来の株券”ではなく、“未来の森券”だったのだ。

その日、SNSには新しいハッシュタグが生まれた。

「#どんぐりは森券」

そこにはバブルで大儲けした人も、大損した人も、みんな笑顔でどんぐりを手にした写真を投稿していた。

健太とチョロは今日も一緒にどんぐりを拾いながら、新しい未来を育てている。

「ピピッ!」
「そうだな、次は“森コイン”で勝負だ!」

どんぐり市場の次なる展開は、まだ誰にも分からない。

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