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ポケットシェフから唐揚げ無限列車物語

ポケットに広がる食欲の宇宙

「また弁当忘れた…。」

9月の朝。
会社員 山田タクミ(32歳)は、通勤電車の中で鞄をひっくり返しながらため息をついた。

「昨日こそ弁当作るって決めたのに。なんで目覚ましに勝てないんだ俺は…。」

周囲の乗客はスマホを見つめたり、イヤホンを耳に差し込んでウトウトしていたが、タクミだけが「昼飯難民」になる未来に怯えていた。

そんなとき、ふとスマホの広告に目が止まった。

【新登場!ポケットシェフ】
【好きな料理をポケットに召喚!】

「なにこれ、怪しいアプリ?」

だがタクミの心は揺れた。
だって、今まさに昼飯問題で困っている。
広告のデザインはチープだが、どこか「試してみろ」と誘惑してくる。

「まあ、無料だし…」

ポチッ。
タクミは深く考えずにアプリをインストールしてしまった。

■第一章 唐揚げ、現る

会社に着く直前。
試しにアプリを起動すると、画面に大きな入力欄が現れた。

【食べたい料理を入力してください】

「ふっ、そんな簡単にいくわけないだろ…」

そう思いつつ、タクミは何気なく「唐揚げ」と入力した。

その瞬間、ズシリとポケットが重くなった。

「え…?」

おそるおそる手を入れると、なんとアツアツの唐揚げがゴロリと出てきた。
黄金色に輝き、衣はカリッと香ばしい。
湯気がふわっと立ちのぼり、電車の中に鶏肉の香りが漂った。

「うそだろ!?マジで唐揚げ!?」

思わず叫んでしまい、周囲の乗客がこちらをジロリと睨んだ。
だがタクミは気にせず、一口かじった。

「うまっ…!これ、コンビニ唐揚げの比じゃねえ!」

ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がり、唐揚げ棒常連の彼は感動で涙ぐんだ。

■第二章 ポケットから弁当革命

翌日。
タクミは出社すると、同僚の 佐藤木村 に自慢げに言った。

「今日のランチ、俺が奢ってやるよ」

「え、珍しいな。昇給でもしたのか?」
「どうせまたコンビニのおにぎり2個だろ?」

タクミはニヤリと笑い、ポケットに手を突っ込んだ。

「ふふふ、俺の新しい“デリバリー”を見せてやる」

ズボッ!
彼のポケットから出てきたのは、湯気立つ天丼。
器ごと現れ、タレがつやつやと光っている。

「なっ…!?ポケットから天丼!?どういうマジックだよ!」
「いやいやいや、器ごととか意味わかんねえだろ!」

二人は大爆笑しながらも、香りに抗えず一口食べた。

「うっま!てか本物だよこれ!」
「山田、お前もう会社辞めて屋台やれよ!」

その日以来、タクミは社内で「歩くデリバリー」「ポケットシェフ山田」と呼ばれるようになった。

■第三章 便利すぎる副作用

しかし、便利なものには必ず落とし穴がある。

ある朝、タクミがポケットに手を入れると、出てきたのは半解凍の冷凍餃子。
ズボンの中で霜がポロポロ落ち、太ももがキンキンに冷えた。

「うわっ、冷てぇ!」

さらに別の日、会議中にくしゃみをした瞬間——

「へっくしょんっ!」

ドシャッ!

なんとポケットからスパゲッティ・ナポリタンが飛び出し、会議資料の上にベチャッと落ちた。
トマトソースが部長の白シャツを鮮やかに染める。

「君は…うちをイタリアンレストランにする気かね!!!」

部長の怒声が会議室に響き渡り、同僚たちは必死で笑いをこらえた。

■第四章 無限食べ放題パーティー

休日。
タクミは大学時代の友人たちを呼び、自宅で「ポケットシェフ食べ放題パーティー」を開いた。

「見ろよ、これが俺の“無限食堂”だ!」

次々にポケットから飛び出すごちそう。
焼肉、寿司、ラーメン、パンケーキ、果ては高級フレンチまで。
友人たちは狂喜乱舞し、SNSにアップしまくった。

#ポケットから寿司 #歩くレストラン

瞬く間にバズり、タクミの家は食欲のテーマパークと化した。

だが、楽しさも束の間。
スマホ画面に突然、赤い警告が現れた。

【警告:召喚しすぎです】
【胃袋容量オーバーです】

「えっ!?アプリのくせに俺の胃袋まで管理してんの!?」

友人たちは爆笑。
だがタクミのお腹はパンパンに張り裂けそうで、まるで妊婦のように膨らんでいた。

■第五章 ポケット暴走事件

数日後。
タクミは電車の中でポケットが勝手に反応し、次々と料理が飛び出す異常事態に遭遇した。

「うわっ!たこ焼き!?えっ、今度はカレー!?いやいや鍋まで!?」

乗客たちは阿鼻叫喚。
スーツ姿のサラリーマンが焼きそばに滑って転び、学生たちは笑いながら唐揚げを奪い合う。

「誰だよ!この唐揚げ製造機!」

タクミは必死でアプリを閉じようとしたが、画面にはこう表示された。

【アップデート完了:ポケット無限モード開始】

「ちょ、勝手にアップデートすんなよ!」

その日、電車はまるごと「移動式バイキング」と化し、ニュースにも取り上げられた。

■第六章 最後の唐揚げ

会社からも近所からも「ポケットからご飯男」と呼ばれ始めたタクミは、ついに疲れ果てた。
だが、彼の心に残ったのは、最初に出会ったあの一粒の唐揚げの温もりだった。

「結局、唐揚げが俺の始まりであり、終わりなんだな」

そうつぶやき、アプリを削除しようとした瞬間。
画面に最後のメッセージが表示された。

【ご利用ありがとうございました】
【あなたのポケットには、いつでも唐揚げが一つだけ残ります】

タクミがポケットを探ると、そこには温かい唐揚げが一粒。
彼はそれを大切にかみしめ、静かに笑った。

「やっぱり…唐揚げ最強だな」

その日以来、タクミは毎朝少し早起きして、自分で弁当を作るようになった。
だがポケットの奥には、今も「非常用唐揚げ」がひっそり眠っているという。

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