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ペット翻訳チャット犬が送った初めての既読

ワンとニャーのハートフル誤訳劇

「ピコン!」

スマホに通知が届いた。
画面を見ると、見慣れないアイコンと一緒に、こう表示されていた。

『ワン!(おやつ)』

「え?……あ、これか!」

主人公・カナは、最近SNSで話題になっていた「ペット翻訳チャット」アプリを試してみたのだ。
犬や猫の鳴き声をスマホが解析し、人間の言葉に変換して表示してくれるという夢のようなサービス。

相棒は、3歳になる柴犬のコハル。
元気いっぱいで、甘えん坊。

「コハル、ほんとに喋ってるみたいじゃん!」

するとまた通知。

『クゥン(散歩!)』

「うわ、わかりやすい!」

カナは笑いながらリードを手に取った。


散歩の途中でもアプリは大活躍だった。
道端で他の犬と会うと、翻訳チャットはまるでLINEのグループトークのように盛り上がる。

『ワン!(誰?)』
『キャン!(こんにちは!)』

飼い主たちはスマホを片手に爆笑。
犬たちが「会話」しているのを眺めるだけで、心がほんのり温かくなる。


家に戻ると、次は思わぬ展開が待っていた。
翻訳チャットに、別のアカウントが参加してきたのだ。

『ニャー(ふん、遅かったわね)』

カナの家に住むツンデレ猫・ミルクだ。
普段はクールで、呼んでもなかなか来ないタイプ。

「え、ミルクも参加するの?」

するとすぐにまた通知が。

『ニャ(ごはんまだ?)』
『ワン!(僕も!)』

二匹の会話がスマホに流れ、カナは思わず吹き出した。


数日後。

カナが仕事で少し落ち込んで帰宅したときのこと。
部屋に入るなりスマホが震えた。

『ワン!(ダイスキ!)』

……犬が。
コハルが「ダイスキ」と送ってきたのだ。

それを見た瞬間、涙がじわっとにじむ。
疲れや孤独が、一気にふっとんだ気がした。

「コハル……ありがとう」

思わず抱きしめると、スマホがまた震えた。

『ニャ(私も!)』

……ミルク。
お前もか。

カナはさらに大笑い。
家の中がまるでコントのように温かくなった。


だが、面白いのはここからだった。

ある日、近所の奥さんが「うちも使ってみたい」と言い、アプリを入れて散歩中に試した。
その奥さんの犬・マロンが送ってきた翻訳がこちら。

『ワン!(コハルかわいい!)』

すぐにコハルが返信。

『ワン!(マロンも!)』

……まさかの犬同士の恋バナである。
飼い主たちは顔を見合わせて赤面。

「いや、なんか照れるね……」
「犬が告白してるのに、私たちがドキドキするなんて」

カナはその場で吹き出してしまった。


やがて「ペット翻訳チャット」は地域でちょっとしたブームになった。
犬同士だけでなく、猫も参加するようになり、翻訳画面はカオスなグループLINE状態。

『ワン!(散歩!)』
『ニャ(寝る!)』
『ワン!(おやつ!)』
『ニャ(窓開けて!)』

カナはふと思った。
――もしかして私よりペットのほうが友達多いんじゃない?

しかし、それでもいいと思えた。
ペットたちが「気持ちを伝えてくれる」だけで、日常がこんなに明るくなるのだから。


ある夜、ふと通知が鳴った。
コハルからのメッセージだった。

『ワン!(ずっと一緒!)』

続けて、ミルク。

『ニャ(仕方ないわね、私も)』

その瞬間、カナの心はあたたかさでいっぱいになった。
翻訳アプリなんて、最初は「ネタ」くらいにしか思っていなかった。
でも――ペットたちがくれる言葉は、どんな占いより、どんな自己啓発本よりも、心を癒してくれる。

「よし、これからもよろしくね!」

カナは声をかけた。
犬も猫も同時に「ワン!」「ニャー!」と返事。

その声は翻訳しなくても、ちゃんと心に届いていた。

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