
目が合ったら契約済👁️
「えっと……これ、サインしないと出られない感じですか?」
私はカフェの一角で、巨大な“目玉の人”に契約書を差し出されていた。
「はい、こちら“愛人契約書”となります」
片言の日本語で言うその声は、妙に抑揚がなくて感情が読み取れない。
っていうかそもそも——感情の読み取り以前に、顔が全部目玉なんですけど⁉️
事の発端は、ただのアルバイト面接だった。
「高時給・週3日・簡単な書類仕事」と書かれた求人を見て、応募したのは間違いじゃなかったはず。
でも面接会場に現れたのは、巨大な眼球スーツをまとった(と思いたい)“アイ人”。
そして、妙に堂々とした態度で言われた。
「あなたの監視、今日から始めます」
どうやら仕事内容は、彼の“恋愛研究”の対象になること。
生活を共にし、行動を観察され、時々アンケートに答え、そして毎晩「目が合う時間」を設ける……。
これ、どこが簡単なバイト⁉️
「まさかこれが“愛人契約”だなんて……」
つぶやいた私に、アイ人はキラリと目を光らせた。
「誤解しないでください。愛とは、観察と理解から始まるのです」
「いやだから、それを“契約”って形で押し付けてくるのがヤバいのよ!」
しかし不思議なことに、3日、5日、1週間……彼の視線(?)に慣れてくると、不安よりも安心の方が勝ってくる。
失敗したときも、泣きそうな日も、いつも変わらず見つめていてくれるアイ人。
無言のまま契約書を更新しながら、ちょっとだけ心があったかくなった気がした。
「契約は……継続でお願いします」
そう告げると、アイ人はまばたきを一度だけして、満足げにうなずいた(ように見えた)。
そして今日、私はアイ人の新たな提案に向き合っている。
「そろそろ“同棲契約”のフェーズに入りましょう」
「待って、それは段階飛ばしすぎじゃない⁉️」
もしかして「愛される」って、こういうことなのかもしれない。
今日も私は、あの大きな瞳と目を合わせながら暮らしている。
——いや、契約上そうなってるだけですけどね!👁️✨
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